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言葉で聞かせて

第12章 忘れられないこと


「ただいま帰りました」


悠史が玄関から声をかけるといつも通り千秋が顔を出す


「おかえりなさい。悠史さん、体調は大丈夫でしたか?」
「えぇ、もうすっかり。ありがとうございます」


良かった、と微笑んだ千秋の顔もいつも通り


ちゃんと考え纏まったみてぇだな


鞄を部屋に置いてリビングに入る
漂ってくる飯の匂いに酒で満たされていたはずの腹が鳴った


「腹減った」
「あれだけお酒飲んだのによく食べられるよね」
「酒と飯って違うところに入ってんだよきっと」
「そんなわけないでしょ」


俺たちがそんな軽口を叩きながら席について飯を食い始めると、千秋は俺たちの向かい側に腰を下ろし微笑んだまま俺たちを見つめた


「美味しいですか?」
「あぁ」
「はい。とても」


千秋のいつも通りな行動はそれからも続き、飯を食い終わって風呂に入っても変わらなかった


俺たちが二人とも風呂から上がり、千秋の淹れたコーヒーを飲みながらソファで寛いでいると


「……」


今度はいつも通りでない千秋が緊張感を纏って俺たちの前に正座した


「……」
「……」
「昨日のこと、ちゃんと考えました」
「そうですか」
「……で?千秋の答えは?」

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