
言葉で聞かせて
第12章 忘れられないこと
「流星ぇ〜!久しぶりぃ〜!」
「あ?久しぶり?」
「昨日いなかったでしょー」
客の女が俺に豊満な胸を押し付ける
今更そんなことで欲情しねぇって
「あぁ、悪いな」
「聖夜もいなったし、昨日ほーんとつまんなかった!」
俺は「悪かったって」とそいつの頭を撫でる
女は目を細めて喜んでいるが、俺としては全く楽しくない
髪の毛かってぇ
ワックス?スプレー?で固めすぎ
イカそうめんみてぇになってんぞ
「りゅーせ、もっと撫でて?」
俺の肩に頭を預けるようにした女から俺の顔が見えないのをいいことに俺は他の席で接客していた悠史を探す
いた
和やかに談笑している悠史と、その笑顔に顔を赤く染める女が見えた
体調、別に悪くなさそうだな
千秋のことを気にしている風でもないし
良かった、かな
俺は今日悠史から千秋が知りたいと言えば、俺の過去だけじゃなく自分の性癖についても話すと出勤途中に言われていた
あいつは余計なことで思い悩みすぎるから心配
なんてな
「ははっ」
「え!?なに!?流星なんで笑ってるの!?」
あーやべ
こいついたのか
忘れてた
「可愛いな、ってさ」
「えぇ〜!?なに!?もぉ、突然やだぁ〜」
