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言葉で聞かせて

第12章 忘れられないこと


結局その日はそのまま寝るか、となって悠史の氷枕を取り替えて俺たちは部屋を出た


「じゃあな。今日はメールのチェックとか何にもしねぇで寝ろよ」
「うん。おやすみ」
「おやすみなさい、悠史さん」


リビングに入ると俺は千秋が俺の背中を叩いて呼んだ


「敦史さん」
「なんだ?」
「今日は一人で寝ます」


まぁ別に
今日はそもそも悠史のとこで寝る日だしな


「あぁ、わかった」


俺に向かって薄く微笑みの顔を作った千秋の頭を少し強めに撫でた


「わ、わ……」
「わかってるよ。ちゃんと考えたいんだろ」


千秋は俺を見上げる


わかってたのか、って顔だな
舐めんじゃねぇよ

そりゃ悠史ほど聡くねぇけど、俺だってお前を見てるんだから


「洗い物もやっといてやるよ」
「えっ……それは……!」


お盆を持ったままキッチンに入ろうとした俺を千秋が服を掴んで止める

俺はその手を優しく振り払った


「いいよ。お前そのままやったら皿割りそう」


俺が笑って「おやすみ」と言うと千秋は一瞬不服そうな顔をしたが諦めて「おやすみなさい」と笑顔で部屋に入っていった


俺たちはお前がどっちの結論を出してもいいからな


心の中で呟いた気持ちは無責任すぎて口に出せねぇけど、千秋に届けばいいって思った

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