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言葉で聞かせて

第12章 忘れられないこと


千秋は俺と悠史の顔を交互に見上げた


「僕だって話すの大変だった癖に、こんなの……勝手、ですよね……」


千秋は落ち込んだ様子で、視線を下げる


「負担とかそういうのは、俺たちにはねぇよ。話すこと自体は何とも思ってない」
「はい。僕が覚悟、と言ったのは相手に重荷を背負わせる覚悟です」
「俺たちはもう何年も背負ってきたものだから、重いって感覚も麻痺してる。だからわからねぇんだよ。お前が潰れた時、どうすればいいのか」
「もし千秋さんが傷を負ってしまったら、当事者の僕たちが何をしても逆効果でしょう?」


千秋は顔を上げた

その顔にはありありと迷いの色が浮かんでいる


俺は千秋の前髪をかき上げて額にキスをした


「いくらでも考えていい。時間はたくさんある」
「今聞かなくてもいいですよ。何年後だっていいんです」


そう言って笑う俺たちに千秋は困ったような笑いを浮かべた


「じゃあ……一晩下さい。明日の夜までに、二人の言っていた事も含めてちゃんと考えてきます」
「期限を限定しなくてもいいんですよ?」
「いえ。明日必ず。…………そうしないと、いつまでも悩んでしまう。明日決めたら、変更はありません」
「…………そうか」


明日の夜、ね

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