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綺麗事だな、ってのが俺の正直な考えだった
確かに悠史の言ってることはもっともで、俺の考えもそうかと聞かれれば否定はしない

しかしそれは都合の良すぎる話だ

俺たちは千秋の過去を聞き出した
それなのにそんなこと言うのか


大切だっつうのは本当のことだが
それでいいのか



千秋は自分の膝に置いた手を強く握った


「だからーー」
「それでも……何も知らないまま貴方達の隣でのうのうと過ごしているわけにはいきません……何も知らないことが、辛いんです……」


肩が震えている
泣いてんのか


「千秋さん……」
「……っ、ぅ……ごめ、なさ……」


悠史がそっと手の甲を撫でると千秋は嗚咽を漏らして泣き出した


どっちがいいんだろうな

このままずっと気にして俺たちの側にいるのと
真実を話して重い荷を背負わせるのと



「……」
「！」


俺は無言で千秋の両脇に手を差し込むと千秋を持ち上げて自分の膝に座らせた


「……千秋。そんなに聞きたいなら話してやる。姉さんも知らない俺たちの全てを」
「！？ちょっと、あつーー」


口を挟もうとした悠史を俺は眼で制した


「…………その代わり、覚悟を決めろ」
「かく、ご……？」
「この話を本当に聞きたいなら、この家を出る覚悟をしろ」
「！？」