
言葉で聞かせて
第12章 忘れられないこと
何かを決心したように顔を上げた千秋は誰にでも聞こえるような大きな声ではっきりと言った
「それには……っ、理由があるんじゃないんですか!?僕に、隠していることがあるんじゃないんですか!?」
「「!」」
気になってたよな
やっぱり
「千秋さん……僕たちはそんなに特別仲が良いなんてことはーー」
「そんなことないです!僕も……っ……疑問に思ってました……成人していて、一ヶ月分の給料で家が建てられてしまうほどの給料がある二人が……なんで、一緒に暮らす必要があるのか……って……」
俯いた千秋の言葉は段々尻すぼみに小さく弱くなっていく
「……僕には……言えないことでしょうか……僕、二人の本当の心の奥にはまだ入り込めていない気がするんです……二人だけの世界みたいなものが、どこかに……あるような……気がして……」
「……」
正直、俺たちにしかわからないことはある
悠史の異常性癖も
俺の破壊衝動も
人にわざわざ暴露する必要なんかないものだ
世界で一人ぐらいがわかっていてくれればいい
俺たちにとってそれが「最愛の人間」だったんじゃなくて、血を分け合った自分の片割れだったっていうだけ
