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言葉で聞かせて

第11章 記憶


じわ、と目に涙が浮かんできて、それを隠すように俯いた


「千秋さん?」と気遣うように名前を呼ばれるけれど顔を上げることが出来ない

すると敦史さんや悠史さんは僕が違う理由で落ち込んでいるんだと勘違いして、慰めの言葉を口にした


「突然あいつらのこと気にしだしたと思ったら末路を聞いて落ち込んでんじゃねぇよ。お前は被害者じゃねぇか。何も気に病むことはねぇ」
「そうですよ。千秋さんは昔も今も被害者です。それに、どんなことがあっても僕が千秋さんを好きでいる気持ちは変わりません」



僕は被害者でいいのかな
自分のことばっかり考えてた僕は


二人の口にした被害者って言葉が頭の中で回る

我慢できなくなった雫が頬を伝って流れた


「ほら、泣くな千秋。こっち来い」


敦史さんが僕に手招きして、僕は引き寄せられるように歩く

側まで行くと敦史さんはその力強い腕で僕をすっぽり包むように抱き締めた


「心配すんな。言ったろ、守ってやる。いつまでも」


すると今度は悠史さんが僕を背中側から優しく抱きしめてくれる


「側にいますから、怖がらないでください」


二人の優しさに包まれて、僕の目からは一層涙が溢れた

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