
言葉で聞かせて
第11章 記憶
いつも作っていたメニューで夕食を作り、二人の帰宅を待つ
朝勝手にいなくなってしまった罪悪感からか、少しだけ緊張してる
扉が開いて「ただいま」と玄関から二人の声が聞こえたのはいつもより少し早い時間だった
廊下に顔を出し、出ない声の代わりに微笑むと敦史さんも悠史さんもほっとした顔をする
心配、してくれたんだ
改めて実感して胸が熱くなった
靴を脱いで体を起こした二人にあれ?、と違和感
着てるスーツがいつも仕事に使うものと違って地味、というか普通のスーツになってる
シャツもただの白いワイシャツだし
僕が作った夕食を食べようと席に着いた二人を更にずっと見ていると流石に怪しまれてしまって、慌てて首を横に振った
美味しい、と食べてくれる二人に安心
よし……!
食後のお茶を出してから僕は本題、とばかりに思い切って紙を差し出した
『あの人たち』というぼんやりした書き方になってしまったのは本当に二人が関わっているのか確証がなかったから
でも悠史さんの発した言葉に僕の疑問は確信に変わる
傷は治る、けど社会復帰は厳しい
真菜さん、という人名もちゃんとわかってる
やっぱり僕、また2人に迷惑かけたんだ
