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言葉で聞かせて

第10章 再来


僕がその子にまた敦史と付き合ってくれないかと頼みに行った時、彼女は目を真っ赤にして泣いてた


『ごめんね、悠史君。私、敦史君のこと好きだよ。好きだけど……怖いよ……あの時の目が……未だに頭から離れないの……』


敦史が暴力を振るっていた時の目
正確には顔かな

確かに狂気的かもしれない

だって今、敦史嗤ってる



僕は話にしか聞いていなかったそれを実際に目の当たりにしたけど、怖いなんて感情は少しも湧いてこなかった

むしろほっとしたのかもしれない

敦史も十分狂ってる

だってほら、僕は今だって目の前に流れる血や男達の口から流れる唾液に少しだけ疼いてる

僕と同じ


この世でたった1人の僕の半身が僕と同じなんて、ちょっと嬉しい


僕は口を手で覆って自然と口の端が釣りあがっているのを隠した


千秋さんに目線を移すと、千秋さんは目を見開いて目の前で展開されるそれを眺めている


どう思ってるんだろう

僕らを好きになる前の千秋さんは

きっとただただ怖いって思ってるんだろうな


もし、記憶が戻ってこれを千秋さんが覚えていたら離れていってしまうだろうか

そしたら敦史はどうなるかな


あの時は僕を


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