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言葉で聞かせて

第10章 再来

悠史目線


敦史がこれ以上ないくらい怒ってる
菜摘の時よりずっと

僕が制止したってきっと止まらないほどに


殴られた男達の口からは蚊の鳴くようなほど小さい呼吸音しか聞こえない


また
こうなっちゃった

僕が止めなくちゃいけなかったのに


あの時

あの時出来なかったから



敦史が高校生の頃

同じ顔の僕がコンプレックスだったのか髪の毛を金色に染めた敦史は荒れていた

毎日喧嘩喧嘩の繰り返しで、常に身体のどこかに傷があって、それを更新し続ける


そんな時に敦史を救ってくれた女の子がいた


双子ってだけで僕と比べる周りとは違って唯一ちゃんと敦史を好きになってくれた女の子


名前は忘れてしまったけれど、その人が出来たことで敦史は喧嘩も止めて1人の女性を大切にする普通の男になれた

けど世の中そう簡単にはいかなくて、敦史がそれまで喧嘩で負かして来た人たちは当然敦史にずっと恨みを持っていて

だから

その女の子を汚されてしまった


それに腹を立てた敦史はその子の前で男達に報復

顔の形もわからないほど殴って、全治までに何ヶ月もかかるほどのけがを負わせた

その男達はそのあと敦史に近づくことはなくなったけれど、最も大切だった彼女は離れていってしまった

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