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言葉で聞かせて

第10章 再来


「あぁ。わかった」


目の前の黒い頭を撫でたくなって手を持ち上げたが、突然やられたら困るよなと思い直してぎこちなく自分の首の後ろを掻いた


「じゃ、行ってくるわ」


俺が歩いてその場を去り、さっき確認した悠史のいなくなった方向になんとなく歩いて行くと


「敦史」


と名前を呼ばれた


「あぁ」
「上手く抜けられた?」
「多分な」


俺たちが物陰に隠れながら千秋を見守っていると、ちゃんと記憶を取り戻そうとしているのか辺りを見回している

そのまま暫く見守っていると、どこから来たのか女が近寄ってきた

会話までは聞こえないが明らかに千秋に話しかけている


顔がよく見えねえんだが
なんか……見たことある……気が……


と思っていると隣にいた悠史が


「えっ……!?」


と声を上げた


「どうした?」
「あの人……僕前に街でナンパされた人だ……」
「あ?」


俺はその女の顔をよく見る


「……俺、前にセックスが合わねぇって言った客いただろ?」
「いたね。……え?まさか……」
「あいつだ……」
「え?なに?名前全然違ったよね?」
「……偽名だったんじゃねぇの」


そんなことより千秋があの女に引き摺られて連れて行かれてる


「追いかけるぞ……!!」

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