
言葉で聞かせて
第10章 再来
『なら良かったです』とまた微笑んだ千秋が黙ると暫く沈黙が流れる
あーーー俺の苦手な空気
と部屋に戻りたい気持ちを抑えてカップを机に戻す時ふと視界に入った紙
宅配便の不在票?
「おい悠史これ」
「あ、そうだ。扉に挟まってたやつ、電話するの忘れてた」
「千秋への荷物?」
「前に聞いたけどファンレターだって」
それを聞いた千秋が少し嬉しそうにして、さらにそれを見た悠史が微笑んだ
「電話して持ってきてもらいましょうか」
『お願いします』と軽く頭を下げた千秋に、悠史が携帯で電話する
丁度すぐ近くにいるから今から向かうと言われ、本当に15分ほどでインターフォンが鳴った
「サインお願いします」
「ーーはい。これで大丈夫ですか?」
「はい!いつもありがとうございます。またお願いしまーす」
「ご苦労様です」
微かに玄関から聞こえる会話に耳を傾けていると
玄関口で荷物を受け取った悠史はダンボールと封筒を1通持って来ていた
「その封筒なんだ?」
「さぁ?わかんない。玄関に落ちてた。僕がエントランスのポストから持って来て落としたのかも」
悠史が千秋にダンボールのみを渡すと千秋はその量に驚いたようだった
「……早く記憶戻して仕事再開しないとな」
俺の言葉に千秋は恥ずかしそうに頷いた
