
言葉で聞かせて
第10章 再来
次の日には昨晩の陰鬱な気持ちは流石に吹っ切れていた
出発の準備をしていると、悠史が「ちょっと敦史!」と怒ったような口調で話しかけてきた
「なんだよ?」
「その服装で行くつもり?」
「……?なんか悪いのか」
俺がわからない、と首をひねると「悪い!」と怒られた
「そんなチャラチャラした服千秋さんが怖がるでしょ!」
「チャラ……?」
「もう!僕が選ぶからちょっと待ってて!」
悠史は俺に怒るだけ怒ると自分の部屋に戻って行ってしまった
そして暫くした後戻ってきた悠史は俺にシャツと黒いパンツを渡してくる
「はいこれ着て!」
「お前なぁ、そんなに気にーー」
「甘い!」
「あ?」
悠史は俺の着ていた服を脱がせ始めた
「おい?」
「少しでも千秋さんを刺激するものはだめだよ!」
結局着せられたのは普段自分では確実に着ねえ地味な服装
「ほら行くよ」
もう憂鬱な気分が戻ってきたわ
病院に着くと退院の手続きを悠史がして病室に迎えに行った
病室の前で悠史と並び改めて気を引き締める
「開けんぞ」
「うん」
俺たちはゆっくりと扉を開けた
「初めまして、千秋さん」
