言葉で聞かせて
第10章 再来
俺たちが電話で佐伯さんに事情を説明すると「わかった。暫く休んでいいよ。ちょっと気になることがあるから調べるけど気にしないで」と言われた
「……なんか関係があるのかな?」
「さぁな。どっちにしても俺たちが考えてもわかることじゃねぇだろ。俺たちはとにかく目の前のことだ」
「そうだね」
気を引き締めたような顔をした悠史は「寝る」と部屋に戻ろうとした俺に明日の出発時間を伝えてきた
「わかった」
「おやすみ」
「あぁ」
部屋に戻った俺は電気もつけずにベッドに沈む
記憶障害
5年前
千秋がまさに苦しんでいた時期
わかんねぇ
どうすりゃいい
俺たちのことは平気だと笑っていた千秋とは違う
俺たちのことが最も苦手な千秋だ
ホストも
男も
いや、前向きに考えるべきだな
コンプレックスを解消できるチャンスかもしれねぇ
……上手くやれば
俺たちに別れをフった理由もわかるかもしれない
俺は自分の胸元の服を強く握った
痛えよ、くそ
数々の女と関係を持って、別れてを繰り返してきた
その中でも一番……いや、初めて感じる心の痛みをどうすればいいのか俺にはわからない
でも
心配なんてもんじゃねぇんだよ
早く治れ
馬鹿
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