テキストサイズ

言葉で聞かせて

第10章 再来


連れて行かれた会議室みてぇな部屋で俺たちは医者に椅子を勧められた


「どうぞ」


無言で座ると医者が診断書を机の上に出して説明し始めた


「小野寺さんの事故の状況なんですが、路上をフラフラ歩いていた小野寺さんに車が衝突したようです。幸い運転していた人が直前でブレーキを踏んだためそこまで強い衝撃ではなかったようですね。ただ……」
「ただ?」
「ただ、倒れた時に頭から倒れてしまい、記憶障害を起こしているようです」


記憶障害……
記憶が混乱してるっつーことか?


「具体的に何年、というのは詳しく検査しないとわかりませんがここ数年分の記憶がなくなっているようです」


ここ数年分
俺たちに会うより前にもどってるっつーことか

だからあんなに怯えてたのか

会った時対人恐怖症とか言ってた気がすんな


しかしなんで金なんか差し出してきたんだ?


俺が首を傾げていると悠史が深刻そんな声を出した


「それなら恐らく、なくなったのはここ5年の記憶ですね」
「?」
「そう言い切れる何かがありましたか?」
「えぇ。僕らに怯えたので」


俺らに怯えたから?


「そうですか。それでは今日はもう遅いので明日の朝から脳波の検査などをして、異常がなければ明日夕方ごろ退院ということで宜しいでしょうか?馴染みの方と一緒の方が小野寺さんの記憶も戻りやすいので」

ストーリーメニュー

TOPTOPへ