
言葉で聞かせて
第10章 再来
「お怪我は?大丈夫ですか?」
俺たちは千秋の身体を隅まで見渡して怪我を確認する
目に見える傷は腕にある絆創膏ぐらいで、特に大きな傷は無さそうだ
「……大丈夫そうだな」
「そうですね。良かった」
俺たちは二人で胸を撫で下ろす
と、そこで気がついた
千秋、震えてる?
なんだ?
俺が頭を撫でようと手を伸ばすと千秋が大きく揺れて、思わず手を引っ込めた
「!?」
「千秋さん?」
俺たちが首を傾げていると千秋は這うように後ろに後ずさって、自分の鞄を漁り始める
なんだ?
何探してんだ?
「あ、紙ですか?」
千秋がまた声を出せなくなったのを思い出した悠史が自分の鞄からメモ帳とペンを取り出した
それを差し出したが千秋はそれに見向きもせずに自分の鞄の中から財布を取り出す
「あ?」
そして千秋は震える手で財布から紙幣を何枚か取り出して俺たちに差し出してきた
その目には涙が浮かんでいる
「なんだ?」
「千秋さん?僕たちお金を貰わなければならないようなことしました?」
俺たちが動揺していると、医者が病室に入ってきた
「ご家族の方ですか?」
「……えぇ。親戚です」
「小野寺さんのこと、詳しくお話ししますのでこちらへ」
