
言葉で聞かせて
第10章 再来
「おい悠史。なんなんだよ」
俺が悠史の手首を掴んで動きを止めさせると悠史が俺を見た
その目は異常に動揺している
「?」
「敦史。千秋さんがーーー」
車にはねられた
その言葉が暗号か何かのように聞こえて、頭の中は真っ白
ようやく理解した時には悠史は荷物をまとめ終えていた
その悠史に掴みかかる
「なんだよそれ!?どういう事だ!!!」
「……っわかんないよ僕も!!!…………ついさっき……病院から連絡が……」
悠史の目にはうっすらと涙が見えた
嘘だろ
どういうことだ!?
「とにかく病院に行こう」
悠史は再び俺の腕を掴んで引く
俺の思考回路は未だ停止したままで、ただされるがまま歩かされた
タクシーで悠史が運転手に伝えた病院が聞いたこともない名前で、どこだそれとか考える
「なんで千秋はそんなとこにいんだよ……」
「僕も知らない」
「なんで……あいつ……」
「敦史うるさい。黙ってて」
「…………っ」
こんなに動揺したの初めてだ
それにこんなに誰かの無事を祈ったのも初めて
どうすりゃいい
俺は
「急いでんだ。トばしてくれ」
口から出たのはそれだけだった
