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言葉で聞かせて

第10章 再来


ボロボロ涙を流しながら呆然と敦史さんの文字を眺めていると、手に握っていた携帯が震えた

何だろう、と開くと


『昨日と同じところ。50万』


とメールが入っている

いつの間にアドレス帳に登録されたのか、差出人は『柏木真菜』になっていた


なんか
お金ぐらいもうどうでもいいかもしれない

もともと自分で使う方じゃないし
使ってあげたい人とは離れてしまったし


僕は涙を腕でぐ、と拭って部屋に戻って通帳とかお金を下ろすのに必要なものを鞄に入れた


駅前の銀行で言われただけの金額を引き出して歩く

昨日一度歩いたきりの道だったけれど、真菜さんに連れて行かれるのが不安すぎて道はちゃんと覚えていた


足重い

でも、何にもないから
大好きな2人と一緒にいられる手段が、他にないから

あんなもの見せられたら終わりだもん


鉄製の扉をゆっくりと開くと軋んだ音が響く

その音に僕が到着したと気づいた男達が玄関を覗いた


「お?来た来た」


リビングに歩いて入ると、後ろから背中を強く蹴られた


「っ」
「遅えよ、ボケ」


その行為に他の人達が「ひでぇ」といいながら笑ってる
その中の1人が床に這いつくばる僕の目の前でしゃがんで手を出した


「ちーちゃんお金」

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