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言葉で聞かせて

第9章 鳴き声、泣き声


だから心配しないで、ね?と微笑んで千秋さんが安心したのを見て僕たちは浴室に向かった


二人で脱がせ合う、なんてアフターで女性にするようなことは多分千秋さんにはハードルが高いだろうと判断して僕は先に服を脱いだ


「千秋さん、先に入っていますね」
「あ……はい……」


湯船に溜めたお湯を肩からかけて、シャワーで頭を濡らす

シャンプーをして髪を流したところで千秋さんが遅いことに気づいた


曇りガラス越しに見える脱衣所のシルエットから千秋さんがいるのはわかるけれど、千秋さんは一向に動かない

濡れた髪をかきあげて薄く戸を開いて声をかけた


「千秋さん?どうかされましたか?」


僕の声にびく、と肩を揺らした千秋さんは「すぐ行きますっ」とだけ言って扉を閉めてしまった

小さな拒絶に少し混乱しつつも、千秋さんの言葉は信じないといけないだろうと考え体を洗う


結局千秋さんが浴室に足を踏み入れたのは僕が全て洗い終えて浴槽に浸かってからだった


「お邪魔します……」


恐る恐る、と言った感じで顔を出した千秋さんに「はい。どうぞ」と答えて洗面器を手渡す

お礼を言いながら受け取った千秋さんに一瞬指先が触れた

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