
言葉で聞かせて
第9章 鳴き声、泣き声
顔を真っ赤にしながら素早い動きでテレビを消した千秋さんに、思わず笑ってしまう
「ふふふっ……」
すると千秋さんが恥ずかしそうに顔を手で隠して脚をパタパタさせるから余計可愛くて、「からかってごめんなさい」と謝りながら抱き締めた
「着替えは準備しましたか?」
「はぃ……」
いい子、という意味で頭を撫でると千秋さんが腕の中で身動ぎする
一瞬離して欲しいのかな、と思ったら位置が悪かっただけなのかすっぽり収まってまた動かなくなった
可愛い
可愛い
髪を鼻で掻き分けるようにして頭皮の匂いを嗅ぐと、若干汗の匂い
僕のせいかな、なんて自惚れてその目にも見えない汗を舐めたいと考えていた
「千秋さん汗かいてますね。お風呂、行きましょうか?」
「ぁ……ぇ……」
僕が腕を緩めると、千秋さんは不安そうな顔をした
「?」
「ぁ、の……僕、汗臭い……ですか……?」
そう言って自分の着ていた服の匂いを嗅ぎ始める千秋さんを目を細めて眺める
一体どこまで可愛くなってしまうんだろう
愛しい感情を隠すことはせずにまた抱きしめた
「臭いなんてそんなことあるわけないじゃないですか。いい匂いですよ。全部」
