
言葉で聞かせて
第9章 鳴き声、泣き声
ぱぁ、と表情を明るくしたその女性は自分の名前をレイナ、と名乗った
レイナさんは
「あ、あのっ……じゃあ、あそこでいいですか?」
とおどおどしながらも嬉しそうに一軒の喫茶店を指差した
「はい」
と僕が微笑むと彼女も笑って、僕の腕に自分の腕を絡めてくる
「?」
「……いい、ですか?」
随分積極的な女性だなぁ
何も言わずに小さく頷くと嬉しそうに僕に擦り寄る
男性にモテそうな感じなのに、逆ナンなんてするんだ
人は見た目に寄らないな
可愛いとは思うけど職業柄こういう人は見慣れているし、スキンシップにも何とも思わない
男性としてダメなのかもしれない
喫茶店に入ると席に案内してくれた店員さんに「カフェオレを1つお願いします」と丁寧に頼んだレイナさんが僕を振り向く
僕は「ホットコーヒーを」とだけ注文して、ソファ席に座った
「……」
「……」
暫く沈黙が流れる
「あ、あの……突然こんなこと聞くのも失礼なんですけど、おいくつなんですか?」
話題作りで最初に年齢から?
慣れてないのかな
少し可笑しくて、僕は笑って答えた
「今年24になります」
