
言葉で聞かせて
第9章 鳴き声、泣き声
枕に顔を埋めても耳を塞いでも頭に浮かぶのは千秋さんと敦史が交わる情景で自分が嫌になる
眠れない
電気はそもそも点けてない部屋は街の明かりに照らされるだけで薄暗い
携帯を開くとディスプレイの明かりに目がくらむ
目を細めて操作していると、メールの着信が数十件
前に確認してから1時間も経たないはずだけどこの量
一件一件開いてみれば、中身は全てお客さんの女性からだった
次はいつ出勤するんだ、いつ会えるんだ、同伴してほしい、彼女にしてほしい、他の子を見ないで、私だけのものになって
大量のメールにはたくさんの僕を求める声
揺らいでしまいそうになる
千秋さんのことは諦めて、女の子を選んだほうがいいんじゃないかって
だって僕は
千秋さんに求められてないから
「はぁ……」
部屋に入ってから何度目ともわからないため息をついて、僕はまたごろんと寝返りを打った
どれくらい物思いに耽っていたのか記憶にある最後に時計を見た時から随分時間が経っていた
キィ、と扉の開く音がしてパタン、と閉まる
廊下を歩く足音がこちらに近づいてきて、途中で消えた
お風呂かな
終わった、のか
