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言葉で聞かせて

第9章 鳴き声、泣き声

悠史目線


1人部屋に戻った僕は激しい後悔と嫉妬の念に襲われていた


かっこつけなきゃ良かったな……


ベッドに勢いよく飛び込む
ギシ、とスプリングが軋んで僕を受け入れてくれた


「はぁ……」


なんだか、前にもこんなことがあった気がする
なんだっけ?


思い出した

中学生のときだっけ
好きな子に意地悪をしてしまう敦史と好きな子には優しくしたい僕が同じ子を好きになった

その女の子は意地悪ばかりする敦史より僕の方を好きになってくれたけど、失恋に酷く悲しんだ敦史を見ていられなくて僕はその女の子の告白を断って敦史に助言した

優しくすべき時には優しくしてあげなさい、と

その子の失恋相手が僕だと知らず、僕もその子を好きだなんて知らなかった敦史は結局その女の子と付き合うことができた


掛け替えのない弟の幸福に僕は喜んだ

けど


「馬鹿だね、悠史は」


その時僕の気持ちを理解して慰めてくれたのは姉だけだった


懐かしいこと思い出しちゃった
センチメンタル、なんて似合わないかな


目の上に腕を乗せて気持ちを落ち着けていると


「ーーっ……っ……!!」


遠くの部屋から聞こえる喘ぎ声


勘弁してよ

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