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言葉で聞かせて

第9章 鳴き声、泣き声


誰のことだ、と問うと千秋は悲しそうな顔をしながら「あのーー」と語り出した


「あの、さっき敦史さんが誘われていた方、です……」
「流のことか?なんで今あいつが……」
「ーーた、んですよね?」


突然蚊の鳴くような声で呟いた千秋の目は涙に濡れている


「あ?何?」
「抱いたんですよね?」
「……は?」


抱いた?
誰が誰を?

話の流れ的に俺が流を?


俺の反応に何を思ったのか千秋は「やっぱり」と心底悲しそうな顔をする


「いやいや、待て千秋。俺が流を何で抱く必要があるんだ」
「え、だって……」
「俺はせいぜい店の客しか抱いてねぇよ。それだって最近すくねえだろうが」


俺の言葉に目を瞬かせた千秋は


「だって……お家早く出るようになったし、外で楽しそうに話してたから……」


と言う


「確かに話してたがそんな関係にはーーってなんで知ってんだ?俺話したっけ?」
「いえ。……病院に行く時に、よく見てたんです……」


病院?
あぁ、悠史があの喫茶店の近くだとか言ってたっけ


「まぁ趣味が合うしな」
「趣味……」
「あぁ。俺もあいつも映画が好きで、その話してただけだ」

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