
言葉で聞かせて
第9章 鳴き声、泣き声
「千秋?」
何か言いたげに口を開いた千秋の口からはしかし声が出ることはない
「お前は先に帰ってろ。な?」
頭に手を置いて撫でてゆっくり掴まれた袖から手を離した
「……」
何も言わない悠史に目配せしてから再び俺は流の方へ足を出す
すると背中に二つの小さな何かが当たった
「!?」
振り向くと当たったと思ったのは千秋の拳
千秋は俺のシャツを両手で強く握りしめていた
その目には僅かに涙がたまっている
「どうーー」
どうした、と聞こうとした
その時
さっきもみた光景
千秋が、口を開けて何かを言おうと
さっきと違うのはその口から
「……っか………ぇ……」
声が
「いか、ないで」
「「!!」」
男にしては少し声が高い
けれど想像より少し低い
それに、落ち着いていて
限りなく澄んだその声で
「行かないで」
千秋が、俺を引き止めた
「千秋……声が……」
「千秋さん、治った……ん、ですか……」
しかし千秋はそんなこと気にする様子もなく、ひたすら俺に両手でしがみついている
「や、です……、かないで……」
終いには振り向いた俺の胸元に顔を埋めた
何か言いたげに口を開いた千秋の口からはしかし声が出ることはない
「お前は先に帰ってろ。な?」
頭に手を置いて撫でてゆっくり掴まれた袖から手を離した
「……」
何も言わない悠史に目配せしてから再び俺は流の方へ足を出す
すると背中に二つの小さな何かが当たった
「!?」
振り向くと当たったと思ったのは千秋の拳
千秋は俺のシャツを両手で強く握りしめていた
その目には僅かに涙がたまっている
「どうーー」
どうした、と聞こうとした
その時
さっきもみた光景
千秋が、口を開けて何かを言おうと
さっきと違うのはその口から
「……っか………ぇ……」
声が
「いか、ないで」
「「!!」」
男にしては少し声が高い
けれど想像より少し低い
それに、落ち着いていて
限りなく澄んだその声で
「行かないで」
千秋が、俺を引き止めた
「千秋……声が……」
「千秋さん、治った……ん、ですか……」
しかし千秋はそんなこと気にする様子もなく、ひたすら俺に両手でしがみついている
「や、です……、かないで……」
終いには振り向いた俺の胸元に顔を埋めた
