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言葉で聞かせて

第7章 過去

「……今日は、寝ましょうか?」


僕が声を掛けると、千秋さんは身体を起こした


「千秋さん?」


背中を支えて起き上がらせると千秋さんは何かを探しているように視線を彷徨わせた


あぁ


「敦史、紙とペン持ってきて」
「わかった」


お茶を淹れて机まで運んできた敦史が紙とペンを手渡すと敦史に少しだけ微笑んでから千秋さんは何かを書き始めた


なんだ?

迷……惑……ーー


『迷惑をお掛けしたのに、このまま眠るなんて出来ません』


律儀な人だな


「元はと言えば僕が悪いのですから、千秋さんは気になさらなくて良いんですよ?」


僕の言葉に千秋さんは首を横に振った


『僕があんなもので脅されてしまったから二人に怪我までさせてしまいました。このまま謝ることもせずに眠ることなんて出来ません』
「怪我って……」


僕達の負った怪我といっても手首と足首が縄で擦れたぐらいで、明らかに大きな被害を受けたのは千秋さんだ

でも僕達がなんと言おうと千秋さんは責任を感じているらしく、頭を下げる

押し問答が続いて最終的に折れたのは敦史だった


「じゃあ、謝る代わりにお前の過去に何があったのか聞かせてくれ」


聞いても、いいのかな

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