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言葉で聞かせて

第7章 過去


でもそんなこと出来るわけがない
千秋さんの前で、そんなこと


「……」


僕が黙ってしまうと、敦史が菜摘に


「画像はここにあるだけか?」


と聞いた


「そう、だけど……」
「そうか」


敦史はそう言うと

バキ、と携帯を踏み潰して壊してしまった


「!」
「……行くぞ」


歩き出した敦史に続いて、僕は放心する菜摘を残したまま部屋を後にした


部屋から出てみると僕達が閉じ込められていたのはどこかの廃墟のようだった


「どこだ?ここ」


いくつかある部屋を漁ると出てきた僕達の荷物から携帯を取り出してGPSを起動する

位置情報を呼び出すとそこまで家や職場から離れたところではなかった

電話してタクシーを呼んで、家まで数十分

家に着いて僕達は漸く一息つくことが出来た


とにかく千秋さんの怪我を治療しなくちゃ、と千秋さんをソファに寝かせて救急箱を取りに行った

敦史はその間にお茶を淹れる用意をしてくれた


「千秋さん、少ししみますよ」
「……っ」


消毒液に千秋さんの顔が歪む

口の端と、引きずられたのか背中の擦り傷を消毒して
お腹に出来た大きな痣には塗り薬を塗る

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