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言葉で聞かせて

第7章 過去


「やめろよ!!!」


僕は思いっきり縄から腕を引き抜いた
少し擦れたけど今はそんなこと気にしている場合じゃない

そして千秋さんの方へ身を乗り出すけど、脚が縛られているから当然、さっきの敦史のように床に倒れた

それでも這ってでも千秋さんのところへ行こうとすると、男達が


「おいおい、お前もかよ」


と近寄ってきて僕に触れた


僕に


「触るなっ!!!」


暴れて、手を振り切る

後ろに振った手が見事に1人の男の顔面に当たった


「いってぇ……な、おい!!」


がしっ、と肩を掴まれて上を向かされる


「ちょっと!悠史に暴力は……っ!!」


菜摘が止めようとした声を無視して男は僕の頬を殴った

殴られたところが熱を持って熱い
口の中に血の味がする


けど


あぁ、そうか


ハイグロフィリアは体液に興奮するんだから


血も、だよね



自分の口内に広がった鉄のような匂いのするその液体を飲み干すと、身体が疼くように痺れる


ほら


僕は僕の肩を掴んでいた腕に噛み付いた


「痛ってぇぇええ!!」


痛いよね

でもまだだ

まだ


出ない



ぐぐ、と歯が皮膚に食い込む

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