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言葉で聞かせて

第7章 過去

そんなこともちろん知るはずもない千秋さんは僕達を見上げた

僕は千秋さんに微笑みかけた


「僕達の働いているお店はそうそう簡単には他人が干渉することは出来ませんよ」
『そう なんですか』


ちゃんと話し合えばよかったな


自分の苦労が無駄だったことへの落胆か、少し気落ちた風な千秋さんの頭を敦史がガシガシと撫でた


「……怪我は、大丈夫か?」


こくん、と千秋さんが頷いたのを確認して敦史は「そうか」とまた頭を撫でる


「痛い思いをさせてごめんなさい」
「俺からも、悪かった」


僕達の謝罪の言葉を聞いた千秋さんは首を横に振った


『僕が悪いんです。なんの相談もしなかったから』
「いや、俺たちが悪い」
「僕達は貴方が家に寄り付かなくなってからも、何も出来なかった。本当はもっと早くに気がついて、もっと早くに何か手を打つべきでした。本当にごめんなさい」


僕が頭を下げると、千秋さんは慌てて僕の頭を上げさせ


『謝らないでください』


と微笑みかけてくれた

また僅かな沈黙が流れると、突然敦史が声を上げた


「あーやっぱり俺こういう空気苦手!」
「?」
「こら敦史」
「解決したんだからいんだよもう。せっかくの休みなんだから、どっか行こうぜ、千秋。何でも買ってやるよ」
「!」


敦史の明るい物言いに空気が少し軽くなる


「そうだね、どこか行きましょうか」

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