テキストサイズ

言葉で聞かせて

第7章 過去

敦史からも、わずかな緊張感が伝わってくる

そして次の瞬間、菜摘はいつも通りの笑顔を見せた


「それわかる。私もそうだもん」


僕は密かに胸を撫で下ろした


結局菜摘は前回来た時と同じように他愛もない話を僕たちと楽しんでから帰っていった

接客が終わり、次の席へ向かう途中で敦史が僕に小さな声で話しかけてきた


「大丈夫だよな?」
「……多分ね」


僕の言葉に緊張がほぐれてのか、敦史は大きくため息をついた


「っはぁーーー……ったく、なんなんだよあの女!あの目!すっげー怖かった……」
「はは、確かに。僕も流石に緊張しちゃった」


その日の仕事が終わり家に帰っても、特に何の変化もなかった


やっぱり菜摘はまだ僕達が菜摘の存在に気づいていることに気づいてない


僕はここ数日で接客したお客様の名前を頭の中に思い浮かべた


1・2・4・7……何人に嘘をついたのか人数を確認する

これで、起爆剤の設置は終わった
後は火を灯すだけ


僕はパソコンを開いた


インターネット上のとある掲示板ではすでに僕が流した噂が広まっているらしく、「あの高級レストランが食中毒だ」と騒いでいる

ストーリーメニュー

TOPTOPへ