テキストサイズ

言葉で聞かせて

第7章 過去


おかしくなった、というか違和感を覚えるような行動が起きたのは確実にあの時だ

千秋さんが突然姿を消してしまった時


あの日、僕は何をしていたっけ?


普通に朝起きて、千秋さんに挨拶をして
作って頂いた朝食を食べて

お昼過ぎくらいにいつも通り出勤した


敦史も僕と大して変わらないだろうから、特にいつもと変わっているようなことはない


では、僕らが家を出てから田中さんとの待ち合わせまでの間に何かがあった、とか?

それに関してはどう考えてもわかるはずがない


どうしたものか、と唸っていると玄関の鍵が開く音がした


「おかえり、敦史」
「……あぁ」


敦史は僕と向き合うようにソファに座る
そして僕の目を見た


「何か考えついたか?」


僕が何を考えてたかわかってるんだ
流石


「ううん。僕らのいない間に起きたことはどうやっても僕らは知り得ないわけだから、原因を特定するのは難しいかなって」
「ふぅん……」


気の無い返事を返した敦史は次の瞬間思い出したような声を出した


「あ」
「なに?」
「そういやさ、前に千秋が家の周りをうろうろしてる奴がいるって怖がってたことがあったな、と」

ストーリーメニュー

TOPTOPへ