
言葉で聞かせて
第7章 過去
とりあえずそのままじゃ湯冷めしてしまうから濡れた体を拭いて、髪も乾かした
少し大きめの敦史から貰ったというパーカーを着た千秋さんはこんな時に不謹慎だけど、すごく可愛らしい
僕がいれたココアに口をつけて千秋さんがふ、と息をついたのを見計らって声をかけた
「…………どこか、痛いところはないですか?」
本当は全身痛いってわかってる
けど、聞かずにはいられなかった
千秋さんが首を横に振ったのを見て、心がツキ、と痛む
本当はもうある程度予想出来てるんだけど
「貴方を傷つけたのは、一体誰ですか?」
僕の質問に、千秋さんは視線を下げる
目の前に用意した紙とペンに手を伸ばすこともない
言いたくない、か
どうしたものかな
僕がどうするべきか考えていると、千秋さんの様子がおかしいことに気がついた
俯いているだけだと思っていた千秋さんは、小さく震えていた
「!」
僕が立ち上がって側に行くと、机で見えなくなったところで千秋さんは縛られた跡に爪を立てている
「千秋さん?」
手をそっと外そうすると、震えがより一層大きくなった
拒絶反応?
「千秋さん、大丈夫ですから落ち着いてください」
