
言葉で聞かせて
第7章 過去
僕の話を聞き終わった菜摘は楽しそうな顔をしている
特に面白い話はしてないと思うけど
訝しげに思いながらも僕ばかりが話すわけにもいかないので、相手がよく話してくれそうな話題を探した
「そういえば、やりたいことというのはどういったことなんですか?」
僕の質問によくぞ聞いてくれましたと言わんばかりに目を輝かせた
「?」
「遊び相手が見つかったの。って言ってもね、誤解しないで。ただの遊びで、本命なんかじゃないからね?あんな奴」
誤解も何も貴方の交際事情なんて僕には関係ないから好きにしてくれていいのに
「あんな奴、なんて言い方はだめですよ。相手の方が可哀想じゃないですか」
「んー…………そうね、ある意味、可哀想かもね」
話の不透明さにイラついていると黒服が僕の足元に跪いた
「聖夜さん、ご指名です」
やっとか
頑張った、僕
僕はグラスに入っていたウィスキーを飲み干した
「ご馳走様でした。また指名してくださいね」
「あ……もう行っちゃうの?」
拗ねた顔をした菜摘に1度微笑みかけてから僕は菜摘の席を後にした
なんだったんだろう
邪魔者、って
僕に言えない会社のこととかオブラートに包んだ表現だったんだろうか
