
言葉で聞かせて
第7章 過去
僕の質問に、菜摘はさっきと同じようにふふふ、と笑いながら僕に腕を絡ませて答えた
「仕事ねぇ、やめちゃったっ」
「え?」
辞めた、って
「どうして退職なさったんですか?」
「だって面倒くさいし、やんなきゃいけないことが他にあったしね」
面倒くさいか
まぁ、菜摘はもともとお金持ちの生まれみたいだから両親からお金を貰って生活しているのかもしれない
「それなのにこんな、お金のかかるところに来ていていいんですか?」
基本不誠実な人間が嫌いな僕の嫌味をどう取ったのか、菜摘はまだ上機嫌ににこにこ笑っている
「いいの。私のお金じゃないし。それにやっと終わったんだから」
やっぱり両親にお金を貰っているのかな?
それにしても、終わったって何だろう?
さっきから話の噛み合わない菜摘に違和感が強くなったが、それを聞く前に菜摘から質問された
「聖夜は?何か変わったことはあった?」
「変わったこと、ですか」
「うん。何でもいいから、何か教えて?」
こういうところでプライベートなことを話すわけにもいかないけど、答えないわけにもいかないので当たり障りのないシャンプーとかの話で流した
