
20年 あなたと歩いた時間
第2章 16歳
「お、すっげ。あれ、ドラえもん?」
流星が空を見上げたまま
うれしそうに言った。そう言われると
上下逆さまになったおなじみの青い
キャラクターに見えた。
「惜しいよなー、上がるまで向きわかんねえのかな?」
右斜め上にある流星の顔は、
本当に楽しそうに見えた。大玉が上がると
その光に照らされて横顔がはっきりと
夜の闇に浮かんだ。
ずっと見てきたはずなのに、最近の流星は
私の知らない顔をする。
花火を見上げて笑う流星は、
今まで何度も見たことがあるのに、
私はこの瞬間も流星のその横顔に
ドキドキする。
「…すぐに消えてなくなるんだな」
そう言う流星の表情は、
もうさっきまでのとは違っている。
花火を映す目が、かすかに揺れている。
「…消えなきゃ、次の花火が上がらないよ」
流星は驚いたように私を見た。
でもすぐにまた笑って、
「そうだな。現実的で夢はないけど、正しい答えだよ」
と言って、私の頭に手を乗せた。
その手が肩に降りてきて、流星は私の体を
自分のほうに引き寄せた。
初めて知った、流星の温かさ。
「ねえ。なんで陸上やめちゃったの?」
ずっと聞きたかった。
あんなに好きだったのに、なぜやめたのか。
「目標が変わっただけだよ」
流星は、そう答えた。
「もうすぐ、夏が終わるな…」
ねえ、流星。
あの時、私の肩を抱く流星の手が
震えていなければ、私はこんな気持ちには
ならなかったよ。
行かないで。
なぜか、そんな言葉が浮かんでは消えた。
こんなに流星は近くにいるのに。
どうして、今まで知らなかった流星を
知ると、こんな気持ちになるの?
花火が終わってみんなが帰り始めても、
私達は立ち上がることができなかった。
ずいぶん時間が経ったかもしれないし、
そう思っただけかもしれないとか考えていると
ふと左肩が軽くなった。
「帰ろう」
流星は左手を私の目の前に出して、
ほら、と言った。その手につかまると、
意外なほど強い力で引っ張り上げられた。
「明日、塾もバイトもないんだ。どっか行く?」
「うん。行く」
「じゃあ朝、電話する」
流星は私を家の前まで送ると、
置いていた自転車に乗って帰っていった。
流星が空を見上げたまま
うれしそうに言った。そう言われると
上下逆さまになったおなじみの青い
キャラクターに見えた。
「惜しいよなー、上がるまで向きわかんねえのかな?」
右斜め上にある流星の顔は、
本当に楽しそうに見えた。大玉が上がると
その光に照らされて横顔がはっきりと
夜の闇に浮かんだ。
ずっと見てきたはずなのに、最近の流星は
私の知らない顔をする。
花火を見上げて笑う流星は、
今まで何度も見たことがあるのに、
私はこの瞬間も流星のその横顔に
ドキドキする。
「…すぐに消えてなくなるんだな」
そう言う流星の表情は、
もうさっきまでのとは違っている。
花火を映す目が、かすかに揺れている。
「…消えなきゃ、次の花火が上がらないよ」
流星は驚いたように私を見た。
でもすぐにまた笑って、
「そうだな。現実的で夢はないけど、正しい答えだよ」
と言って、私の頭に手を乗せた。
その手が肩に降りてきて、流星は私の体を
自分のほうに引き寄せた。
初めて知った、流星の温かさ。
「ねえ。なんで陸上やめちゃったの?」
ずっと聞きたかった。
あんなに好きだったのに、なぜやめたのか。
「目標が変わっただけだよ」
流星は、そう答えた。
「もうすぐ、夏が終わるな…」
ねえ、流星。
あの時、私の肩を抱く流星の手が
震えていなければ、私はこんな気持ちには
ならなかったよ。
行かないで。
なぜか、そんな言葉が浮かんでは消えた。
こんなに流星は近くにいるのに。
どうして、今まで知らなかった流星を
知ると、こんな気持ちになるの?
花火が終わってみんなが帰り始めても、
私達は立ち上がることができなかった。
ずいぶん時間が経ったかもしれないし、
そう思っただけかもしれないとか考えていると
ふと左肩が軽くなった。
「帰ろう」
流星は左手を私の目の前に出して、
ほら、と言った。その手につかまると、
意外なほど強い力で引っ張り上げられた。
「明日、塾もバイトもないんだ。どっか行く?」
「うん。行く」
「じゃあ朝、電話する」
流星は私を家の前まで送ると、
置いていた自転車に乗って帰っていった。
