
20年 あなたと歩いた時間
第12章 君が生きた日々
僕がずっと考えていた、耐性を持つ細胞を
長期に渡って生かす方法。その細胞を作る
ことができれば、病変した組織を作り直したり
欠損した場所を新たに作ることができる
ようになる。
どうしても、誰かに聞いてほしくて十河先生に
ダメもとで提出したのだ。笑われることも、
覚悟して。
「あれ、実験してみていいかな?」
「え…あ、はい!」
実験…?あの仮説が立証されたら…!
「まあ色々問題は出てくるだろうけど、すごく斬新な仮説だよ。…流星くんは、本気で考えてるんだろ?」
「はい。本気です」
「正直、驚いた。なんで19やそこらの学生がこんな仮説を立てることができるのか、どんな頭脳を持っているのか…川辺先生に電話したんだ。流星くんがどんな高校生だったのか、どうしても知りたくて」
僕は上の空だった。
まだ実験すら始まっていないのに、もう、その
細胞はのぞみを救うことができると確信した。
いや、正確には、のぞみがあの病気をお母さん
から受け継いでしまっても、のぞみは絶対に
生きられる、と。
僕は絶対にのぞみを失うことはない、と。
「これから、何年もかけて立証していくことになる。だから、流星くん。早く立派な医師に
なって、僕らと一緒に研究しような。もちろん
それまでに結果が出ても、君の名前は出させてもらうからね」
夢のようだった。
僕は、考えて考えて、あきらめないことを川辺先生から教わった。答えは出なくても、考えること。それを信じた。
のぞみを救うため。それだけを考えて。
「僕を頼って、この大学に来てくれたんだろ?小学生だった君を思い出して、もう運命だったんだと思わずにはいられなかったよ。この歳になって初めて、科学より前に非科学があると感じたよ」
十河先生は、僕の向かいに座って、まっすぐに僕を見て言った。
「真島さんは…のぞみちゃんのお母さんはね、あの大学病院の看護師だった。あの頃僕はそこで臨床医をしていて…僕の同僚だったんだ」
「はい。知っています」
「仲間をね…失ったんだ。大切な仲間を。だから僕はあれから、研究に身を捧げようと決めた。だから、目指すところは君と同じなんだ」
それってもしかして…十河先生は同僚だった
のぞみのお母さんを…
「まあ、問題点はある。実験前からいくつか。でもその都度クリアしていこう」
十河先生は、また准教授の顔に戻って言った。
長期に渡って生かす方法。その細胞を作る
ことができれば、病変した組織を作り直したり
欠損した場所を新たに作ることができる
ようになる。
どうしても、誰かに聞いてほしくて十河先生に
ダメもとで提出したのだ。笑われることも、
覚悟して。
「あれ、実験してみていいかな?」
「え…あ、はい!」
実験…?あの仮説が立証されたら…!
「まあ色々問題は出てくるだろうけど、すごく斬新な仮説だよ。…流星くんは、本気で考えてるんだろ?」
「はい。本気です」
「正直、驚いた。なんで19やそこらの学生がこんな仮説を立てることができるのか、どんな頭脳を持っているのか…川辺先生に電話したんだ。流星くんがどんな高校生だったのか、どうしても知りたくて」
僕は上の空だった。
まだ実験すら始まっていないのに、もう、その
細胞はのぞみを救うことができると確信した。
いや、正確には、のぞみがあの病気をお母さん
から受け継いでしまっても、のぞみは絶対に
生きられる、と。
僕は絶対にのぞみを失うことはない、と。
「これから、何年もかけて立証していくことになる。だから、流星くん。早く立派な医師に
なって、僕らと一緒に研究しような。もちろん
それまでに結果が出ても、君の名前は出させてもらうからね」
夢のようだった。
僕は、考えて考えて、あきらめないことを川辺先生から教わった。答えは出なくても、考えること。それを信じた。
のぞみを救うため。それだけを考えて。
「僕を頼って、この大学に来てくれたんだろ?小学生だった君を思い出して、もう運命だったんだと思わずにはいられなかったよ。この歳になって初めて、科学より前に非科学があると感じたよ」
十河先生は、僕の向かいに座って、まっすぐに僕を見て言った。
「真島さんは…のぞみちゃんのお母さんはね、あの大学病院の看護師だった。あの頃僕はそこで臨床医をしていて…僕の同僚だったんだ」
「はい。知っています」
「仲間をね…失ったんだ。大切な仲間を。だから僕はあれから、研究に身を捧げようと決めた。だから、目指すところは君と同じなんだ」
それってもしかして…十河先生は同僚だった
のぞみのお母さんを…
「まあ、問題点はある。実験前からいくつか。でもその都度クリアしていこう」
十河先生は、また准教授の顔に戻って言った。
