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20年 あなたと歩いた時間

第12章 君が生きた日々

「それってさ、『人恋しい』って状態ですよね?流星くん」

真緒に会うため地元に戻る途中、京都に寄って
くれた要と待ち合わせた。

「…何なんだろな。ふと、穴に落ちたみたいな気分になるんだ。それでのぞみに会って、そういうことすると、落ち着く」
「『そういうこと』か…流星の口からそういうこと、を聞くとは」

よく来るお好み焼き屋は、部活帰りの学生が
大半だ。目の前の鉄板は熱いのに、テーブルの
スペースが狭すぎて、手が当たらないように
注意しなければならない。
各々自分の注文したものが、バイトの女の子に
よって焼かれていくのを見守っている。

「んだよ。そこはどうでもいいだろ」
「確かに、ずっと一緒にいたいよな…」

要は真緒を思い出している。

「京都なんかに寄り道してる場合かよ」
「だから、これ食ったら帰るって」
「おー、帰れ帰れ」

要は大学も東京の生活も楽しいと言った。でも
僕やのぞみや真緒がすぐ近くにいた頃のような
無防備な自分ではいられないと言った。
新しい環境で出来た友達は、話さなければ
伝わらないし、会わなければすぐに疎遠に
なる。そういう関係を、維持する必要が
あるのかわからない、と。
それを要は「全然、もろい」と、表現した。

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