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20年 あなたと歩いた時間

第12章 君が生きた日々

西医体が終わり、大学に入って初めての夏が
終わった。
学校が後期に入り、また忙しい日常が戻って
きた。
わが京都医大陸上競技部は、45大学中20位で
僕はどの種目にも入賞しなかった。
だけど、想像以上に自分の感情が薄いことに
驚いた。
もうここ何ヵ月かの、僕の中に不在だった
感情を再確認したにすぎない。
走ることよりも、しなければならないこと。

「どーしたん?まさか元気ない?」
「あ、圭介か。おはよ」
「おはよ。今日、出る?部活」
「…考え中」

昨日まで続いた雨が止み、空が晴れようと
している日曜日の朝。
下宿の食堂で、牛乳を飲みながら圭介が新聞を
広げた。
僕はつけっぱなしのテレビを見ているのか
見ていないのか内容は頭に入っていなかった。

「秋だなー」
「だな」

圭介はシャツのボタンを留めながら窓の外を
見た。シャツを着るってことは、家庭教師の
バイトか。

「なあ、二人で住める部屋って、大学の近くならいくらくらいかな?」
「んー、8万とか?…なに、一緒に住むん?のぞみちゃんと」
「まだ構想段階」
「ま、金銭的には今と変わらんやろな」
「だよな」
「あ、けど引っ越すなら年度末がええで。卒業する先輩のあととか、安くしてもらえるって聞いた」
「へえ、そうなんだ?」


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