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20年 あなたと歩いた時間

第12章 君が生きた日々

「会いたいって言えよ。なんでそこ、遠慮するんだよ?」
「だって…」
「だって、何だよ?はっきり言えって!」

振り返って思わず大きな声が出てしまった。
のぞみはキャミソール1枚で、髪を乱したまま
目を潤ませていた。
することが多すぎて、のぞみを後回しにして
いたのは僕のほうだ。
そんな僕に、『会いたい』なんて、のぞみから
言うわけがないじゃないか。
かつて、僕が別れを切り出した時でさえ、何も
言わなかったのぞみが。
いや、言えなかったんだ。僕がそうさせた。
今も。

「ごめん。…おれ、のぞみのこと考えてなかった」

時間がないとか忙しいとか、自分の都合
ばかりに目を向けていた。
時間は作るものだと教えてくれた川辺先生を
思い出してた。
そうやって、今までしたいことをしてきたじゃ
ないか。

「時間、作るよ。のぞみにいやな思いさせたくない」
「無理しないで。そのほうがいやだ」
「無理するよ。西医体終わったら、無理する」

この話は終わり、のつもりでキスをした。
のぞみは僕のわがままに仕方なく付き合うと
言った感じで笑った。
僕はふと、一緒に住むのはどうだろうなと思った。

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