
20年 あなたと歩いた時間
第12章 君が生きた日々
僕は呼ばれてもいなければ、十河先生の講義も
ないのに研究室に出入りした。
先輩が研究に没頭する様子を見ているだけでも
良かった。
医学部に入れば十河先生の授業が受けられると
思っていたが、実際は違った。
十河先生の講義なんて1年生は皆無、2年生に
なっても、やっと1科目あたり2コマくらい
しかない。だから自分から行くしかない。
「…って流星、どんだけアグレッシブやねん!」
「だって、早く勉強したいだろ?今なんか高校の延長じゃん」
「まあ確かに…けど、その今こそ流星みたいに引き出しを増やしておく時期なんかもな」
「だろ?!」
みんなが引き上げたあとの、下宿の食堂で
圭介とふたり、語り合う貴重な時間。
圭介もバイトや部活で多忙な身だ。地元には
彼女もいる。
「大丈夫なんか?のぞみちゃんは」
「え?何が?」
「会えてるんか?」
そう。友達にまで心配されるほど、僕らは会う
時間が少なかった。
京都に来てから、同じ大学に通っていると
いうのにまともにデートできるのは、月に一度
くらいだった。
もうすぐ大学は夏休みに入る。そうすればもう
少し、時間ができるはずだ。
でも、正直いまの僕は、のぞみのことが
後回しになっていた。
あれもしたい、これもしたい、でも時間がない
と後ろからせっつかれる感じを拭いきれない。
なんでこんなに余裕がないんだろう。
「あーっ!」
「…うわ、びっくりした。大丈夫か?」
「うん…ごめん、なんかいっぱいいっぱいだ、おれ。部屋戻るわ」
「息抜き、しーや。適当に」
僕は返事の代わりに手を挙げて、答えた。
ないのに研究室に出入りした。
先輩が研究に没頭する様子を見ているだけでも
良かった。
医学部に入れば十河先生の授業が受けられると
思っていたが、実際は違った。
十河先生の講義なんて1年生は皆無、2年生に
なっても、やっと1科目あたり2コマくらい
しかない。だから自分から行くしかない。
「…って流星、どんだけアグレッシブやねん!」
「だって、早く勉強したいだろ?今なんか高校の延長じゃん」
「まあ確かに…けど、その今こそ流星みたいに引き出しを増やしておく時期なんかもな」
「だろ?!」
みんなが引き上げたあとの、下宿の食堂で
圭介とふたり、語り合う貴重な時間。
圭介もバイトや部活で多忙な身だ。地元には
彼女もいる。
「大丈夫なんか?のぞみちゃんは」
「え?何が?」
「会えてるんか?」
そう。友達にまで心配されるほど、僕らは会う
時間が少なかった。
京都に来てから、同じ大学に通っていると
いうのにまともにデートできるのは、月に一度
くらいだった。
もうすぐ大学は夏休みに入る。そうすればもう
少し、時間ができるはずだ。
でも、正直いまの僕は、のぞみのことが
後回しになっていた。
あれもしたい、これもしたい、でも時間がない
と後ろからせっつかれる感じを拭いきれない。
なんでこんなに余裕がないんだろう。
「あーっ!」
「…うわ、びっくりした。大丈夫か?」
「うん…ごめん、なんかいっぱいいっぱいだ、おれ。部屋戻るわ」
「息抜き、しーや。適当に」
僕は返事の代わりに手を挙げて、答えた。
