
20年 あなたと歩いた時間
第12章 君が生きた日々
それから二週間あまりが過ぎ、僕ら受験生に
とって未来を左右する時期がやってきた。
「おっまえ、すげーな!よくやったよ!この
調子で二次試験いけよ、な!」
センター試験の自己採点で、僕は過去最高点を
叩き出した。
「どうする?いいのか?」
川辺先生は、もっと上に出願するかどうか
聞いている。
「いい。もう決めてるから。それに、十河先生
じゃないと」
「そうか。そうだな」
進路指導室を出ると、同じクラスで野球部の
渡辺に鉢合わせた。
「お、渡辺」
「あ、小野塚」
はは。なんだこの挨拶。
「そういや小野塚、二次どこ」
「京都医大」
「そっか。おれ神大。がんばろうな」
「おう」
そういや神大、野球強いもんな。続けるって
ことか。
「なあ、小野塚!」
「ん?」
いつも低めの声でボソッと話す渡辺が、珍しく
声を張って僕の名前を呼ぶ。振り返ると、
背の高い渡辺の向こうに、薄紫の空が広がって
いた。
「おまえ、めっちゃ気持ち良さそうに走んの
な!」
「…気持ちいんだよ」
「ふ…じゃあな」
「うん。じゃあな」
それで思い出した。走ろう。久しぶりに、
走ろ。
このグラウンドで走れるのもあとわずかだ。感触を覚えておきたい。僕が再び走る喜びを
味わったグラウンド。ちゃんと終わらせよう。
ここで経験したこと。ここで考えたことも、
迷ったことも、悩んだことも。
失敗も、後悔も、全部。
全部、僕の力になれ!
「…位置について…」
僕はいま、ちゃんと自分の未来が見えていると
気づいた。
刺すような寒さの、京都、3月。
「…あった」
「あ、あった!あった!」
「あったー!!よくやった流星!」
「あった…また一緒にいられる…」
小野塚流星、18歳。サクラサイタ。
とって未来を左右する時期がやってきた。
「おっまえ、すげーな!よくやったよ!この
調子で二次試験いけよ、な!」
センター試験の自己採点で、僕は過去最高点を
叩き出した。
「どうする?いいのか?」
川辺先生は、もっと上に出願するかどうか
聞いている。
「いい。もう決めてるから。それに、十河先生
じゃないと」
「そうか。そうだな」
進路指導室を出ると、同じクラスで野球部の
渡辺に鉢合わせた。
「お、渡辺」
「あ、小野塚」
はは。なんだこの挨拶。
「そういや小野塚、二次どこ」
「京都医大」
「そっか。おれ神大。がんばろうな」
「おう」
そういや神大、野球強いもんな。続けるって
ことか。
「なあ、小野塚!」
「ん?」
いつも低めの声でボソッと話す渡辺が、珍しく
声を張って僕の名前を呼ぶ。振り返ると、
背の高い渡辺の向こうに、薄紫の空が広がって
いた。
「おまえ、めっちゃ気持ち良さそうに走んの
な!」
「…気持ちいんだよ」
「ふ…じゃあな」
「うん。じゃあな」
それで思い出した。走ろう。久しぶりに、
走ろ。
このグラウンドで走れるのもあとわずかだ。感触を覚えておきたい。僕が再び走る喜びを
味わったグラウンド。ちゃんと終わらせよう。
ここで経験したこと。ここで考えたことも、
迷ったことも、悩んだことも。
失敗も、後悔も、全部。
全部、僕の力になれ!
「…位置について…」
僕はいま、ちゃんと自分の未来が見えていると
気づいた。
刺すような寒さの、京都、3月。
「…あった」
「あ、あった!あった!」
「あったー!!よくやった流星!」
「あった…また一緒にいられる…」
小野塚流星、18歳。サクラサイタ。
