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20年 あなたと歩いた時間

第12章 君が生きた日々

抱きしめた細い肩はいとおしくて、僕の背中に
まわされた両手は真冬なのに熱い。
シャツ越しに伝わる体温が、本物だと教えて
くれる。身体中の血液が沸騰したかのように
一瞬で経験したことのないような熱さが全身を
かけめぐる。
なんだ、これは。

「流星…大好き…大好き。やっぱり…ダメ、何も言えなくなる…」
「もういいよ。何も言うな…!」

ああ。生き返ったみたいだ。
死んだことないけど、生き返ったらたぶん、
こんな感じ。
のぞみがいないと、生きられないんだ。
きっと。いまならわかる。
何ともないふりをしていた。
クールだとか優等生だとか言われて、それが
僕だと思い込んでいた。
違う違う。全然違う。
めちゃめちゃカッコ悪いし、言い寄られれば
簡単になびくし、自分に都合のいいように
信じたりもする。気に入らなければキレたりも
するし、ふてくされもする。
食べ物の好き嫌いはあるし、風呂に入らず
寝ることもある。
でも、のぞみとずっと一緒にいられるなら、
全部改める。いま、この瞬間から!

「流星…もっとぎゅってして…」
「うん…」

僕らは、夜とは言え、ここが外だということも
忘れて抱きしめあった。

「おれ…まだ18年しか生きてないけど、のぞみが全てだと思う…絶対」
「絶対なんて言っちゃだめだよ」
「言うよ。絶対」

言うよ。のぞみが全て。僕の、全部だ。

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