
20年 あなたと歩いた時間
第12章 君が生きた日々
桐野が折れてくれた。
許してくれたとは思わないけれど、僕は自分に
都合よく解釈することにした。
それよりも、のぞみが気になった。
桐野を僕と競わせたこと。
桐野が「負けたら」そのまま交際は続行すると
言ったこと。
桐野が僕に勝ったことはない。それはのぞみも
知っていると思う。なのに。
いまいち、考えていることが読めなかった。
そのことが、僕に二の足を踏ませていた。
模試やら実力テストやらで、目の前の課題を
片付けていくうちに、季節はすっかり冬に
なっていた。
「寒っ…」
浜風をまともに受けながら、自転車を
走らせた。
学校の図書館は期末テスト前で席がなく、
僕は仕方なく市立図書館に向かった。
家で勉強すればいいんだろうけど、昼間誰も
いない家で、暖房をつけるのが悪い気がした。
そういうの、母さんは何も言わないけれど、
姉ちゃんがうるさい。
市立図書館は自習室が広くていい。
利用者名簿を開くと、書こうとした数段上に
のぞみの名前を見つけた。
一緒に勉強する、って空気じゃないよな…。
一応まだ桐野とどうなったのか知らないし、
校内で見かけても挨拶すらまともにしていない。
僕は気づかれないように、一席ずつ仕切られた
机に荷物を置いた。
…同じ空間にいると思うだけで、ヤバイ、
気になる。
こんなことなら家に帰れば良かった。
寒さに震えながら勉強するほうが、
精神衛生上はマシだ。
勉強のことだけを考えていられる強靭な心が
ほしい。
みんなどうやって切り替えてんだろう。
ふと、空を見た。
あの日見た空に似ていた。今日みたいに、
図書館で勉強していた。
でも僕の左側にはのぞみがいた。 あの日、
初めてのぞみの肌に触れた。
僕はその夜、眠れずにいたことを覚えている。
ふと、手に持っているシャーペンを見た。
もう、原型をとどめていない、元はウサギ
だったはずのキャラクターが、その時間の
経過を物語っていた。
あれから2年が過ぎたのだ。2年経っても
僕らはぐずぐずした関係だったし、
その頼りない関係でさえ消えかけていた。
許してくれたとは思わないけれど、僕は自分に
都合よく解釈することにした。
それよりも、のぞみが気になった。
桐野を僕と競わせたこと。
桐野が「負けたら」そのまま交際は続行すると
言ったこと。
桐野が僕に勝ったことはない。それはのぞみも
知っていると思う。なのに。
いまいち、考えていることが読めなかった。
そのことが、僕に二の足を踏ませていた。
模試やら実力テストやらで、目の前の課題を
片付けていくうちに、季節はすっかり冬に
なっていた。
「寒っ…」
浜風をまともに受けながら、自転車を
走らせた。
学校の図書館は期末テスト前で席がなく、
僕は仕方なく市立図書館に向かった。
家で勉強すればいいんだろうけど、昼間誰も
いない家で、暖房をつけるのが悪い気がした。
そういうの、母さんは何も言わないけれど、
姉ちゃんがうるさい。
市立図書館は自習室が広くていい。
利用者名簿を開くと、書こうとした数段上に
のぞみの名前を見つけた。
一緒に勉強する、って空気じゃないよな…。
一応まだ桐野とどうなったのか知らないし、
校内で見かけても挨拶すらまともにしていない。
僕は気づかれないように、一席ずつ仕切られた
机に荷物を置いた。
…同じ空間にいると思うだけで、ヤバイ、
気になる。
こんなことなら家に帰れば良かった。
寒さに震えながら勉強するほうが、
精神衛生上はマシだ。
勉強のことだけを考えていられる強靭な心が
ほしい。
みんなどうやって切り替えてんだろう。
ふと、空を見た。
あの日見た空に似ていた。今日みたいに、
図書館で勉強していた。
でも僕の左側にはのぞみがいた。 あの日、
初めてのぞみの肌に触れた。
僕はその夜、眠れずにいたことを覚えている。
ふと、手に持っているシャーペンを見た。
もう、原型をとどめていない、元はウサギ
だったはずのキャラクターが、その時間の
経過を物語っていた。
あれから2年が過ぎたのだ。2年経っても
僕らはぐずぐずした関係だったし、
その頼りない関係でさえ消えかけていた。
