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20年 あなたと歩いた時間

第2章 16歳

「何だよ、急に」

案の定流星と紺野さんは、
一緒に参考書コーナーにいた。
紺野さんは真剣に本をめくる流星の
手元を横から覗きこんでいた。
その流星の手を引っ張るようにして
私達は本屋をでた。

「あ、あのね、なんか急にアイスが食べたくなったの」

流星は特に気にしない様子で、
じゃあ行く?と、
いつものアイスクリーム屋の名前を
言った。
流星はコーラを、
私はバニラとストロベリーのダブルを
カップで注文し席についた。

「のぞみ、ほんとにアイスが好きだよな」
「夏はアイスでしょ」

私はひとくち掬って答える。

「子どもの頃からずっとだよな」
「うん。ずっと」

流星は椅子の背にもたれて、
私を通り越して外の通りを眺めている。
コーラの氷がカラン、と音を立てた。

「り、流星は勉強どう?」

『ほとんど全員』が
『流星狙い』のことについて聞きたいのに
何となく聞けないでいる。
客観的に見て、流星はかっこいいと
思う。高校に入ってから
背もぐんと伸びた。
中学時代、陸上部で鍛えた体は
適度に筋肉質だし、
性格は裏表なくみんなに優しい。
あ、でも時々はっきりすぎるくらいに
意見を言うから傷つけられることも
あるけど…
そうか。流星はモテるんだ。
紺野さんが流星と仲良くしたいのも
わからなくはない。

「英語はもうちょいかな…あとは、まあまあ」
「でも流星の言うもうちょいって、普通よりかなりできるんでしょ」
「……」

あ。なんかこの「間」。
最近多い気がするのは気のせいかな。
もともと口数は少ない方だけど、
高校に入ってから輪をかけて
無口というかむらがあるというか。
楽しく話していても
突然ふと黙ってしまったり、
ぼんやりしていたり。
そんなことを考えていると、
流星が最近始まったドラマのことを
話し始めた。
それは大学に通う男女が
恋に友情に奔走するありきたりな
ストーリーだが、
なぜか毎週観てしまうのだった。
そのヒロインが流星はタイプだと言う。
流星がドラマを欠かさず
観ていることのほうが驚きだと
私は言った。
すると、また流星は黙ってしまった。
ぼんやりと、外を眺めている。

「なあ、のぞみ」


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