
20年 あなたと歩いた時間
第12章 君が生きた日々
昨日川辺先生がうちに来た。三度目だ。
また、医学部を受験させてやってほしい、と
両親に頭を下げてくれた。
川辺先生は自分も同じ境遇だったと言った。
医師になりたかった。でも家が貧しかったのも
あるし僕のような確たる目標もなかった。
言い返せるだけの気持ちを持ち合わせて
いなかった、と。
「十分な成績もありますし、陸上で鍛えて体力もあります。医学部に入って、絶対に立派な医師になれます!だから、僕からもお願いしますっ」
「先生…この子、そんなに成績いいんですか?お姉ちゃんはともかく、流星は…主人の妹が医師をしていまして、大変な仕事だというのも分かっていますし…」
「お母さん。三者面談でも申し上げましたが、理数科で5本の指に入ってるんです。小野塚と同じ成績の子が目指してるのは、東大とか京大なんです」
「…そうですか」
父さんも母さんも、僕の成績を知らないわけ
じゃない。
僕の体のこととか、頑張りすぎる性格が医師に
向かないと思っているのだ。
「…先生、よろしくお願いいたします。私どもは事業に失敗した経験もございまして。息子には、悔いのない人生を送って欲しいと思っております」
父さんが、そう言って川辺先生に頭を下げた。
折れた。
「あ…!いや、こちらこそ!ありがとうございます!絶対、絶対小野塚は医学部に合格させますから!ほら、流星、おまえも」
「あ、うん。頑張ります。父さん、母さんありがとう!」
こうして僕は、今までよりもっと勉強
しなくてはならなくなった。
そして気づいた。
『悔いのない人生』。父さんがそんなことを
考えていてくれた。
僕のことなど興味がないと思っていたのに。
母さんが僕には未来があると、話してくれた
ことを思い出した。
失敗も、やり直すことも、悔いのない人生の
ために。
やっぱり僕は、全部諦めたくない。
また、医学部を受験させてやってほしい、と
両親に頭を下げてくれた。
川辺先生は自分も同じ境遇だったと言った。
医師になりたかった。でも家が貧しかったのも
あるし僕のような確たる目標もなかった。
言い返せるだけの気持ちを持ち合わせて
いなかった、と。
「十分な成績もありますし、陸上で鍛えて体力もあります。医学部に入って、絶対に立派な医師になれます!だから、僕からもお願いしますっ」
「先生…この子、そんなに成績いいんですか?お姉ちゃんはともかく、流星は…主人の妹が医師をしていまして、大変な仕事だというのも分かっていますし…」
「お母さん。三者面談でも申し上げましたが、理数科で5本の指に入ってるんです。小野塚と同じ成績の子が目指してるのは、東大とか京大なんです」
「…そうですか」
父さんも母さんも、僕の成績を知らないわけ
じゃない。
僕の体のこととか、頑張りすぎる性格が医師に
向かないと思っているのだ。
「…先生、よろしくお願いいたします。私どもは事業に失敗した経験もございまして。息子には、悔いのない人生を送って欲しいと思っております」
父さんが、そう言って川辺先生に頭を下げた。
折れた。
「あ…!いや、こちらこそ!ありがとうございます!絶対、絶対小野塚は医学部に合格させますから!ほら、流星、おまえも」
「あ、うん。頑張ります。父さん、母さんありがとう!」
こうして僕は、今までよりもっと勉強
しなくてはならなくなった。
そして気づいた。
『悔いのない人生』。父さんがそんなことを
考えていてくれた。
僕のことなど興味がないと思っていたのに。
母さんが僕には未来があると、話してくれた
ことを思い出した。
失敗も、やり直すことも、悔いのない人生の
ために。
やっぱり僕は、全部諦めたくない。
