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20年 あなたと歩いた時間

第12章 君が生きた日々

「ちょっと、顔貸してくれる?」

昼休み。
さっきの授業でわからなかったところを
もう一度やってみようと参考書を開くと、
頭上から真緒の声がした。
畏れているものの気配には敏感な僕だ。
常に警戒していなければ足元をすくわれる。

「ま、真緒か」
「そう。真緒です」

ヤバイ。相当キレてる。

「あれ~加納さんどうしたの?小野塚くん、いじめに来たの?」

紺野が横から軽く入ろうとした。

「ごめん紺野さん、流星に味方はいらないからあっち行ってくれるかな?」

うわ、本気だ。顔貸せって言われて貸したら
返してもらえない気がする!

「じ、じゃあ、屋上でも行く?」

のぞみのことだろう。教室で説教されても
たまんねえからな。

「わかった。屋上ね。突き落とされても後悔しないでよね」
「ってことで、5時間目におれがいなかったら、そういうことだから!松井!」
「…わかった」

僕は真緒の前を歩いた。
屋上に続く、 ホコリっぽいにおいのする
階段を上がる。

「真緒が言いたいことは大体わかってるよ、だから」
「いーや、あんたが思ってるほど事態は甘くないね」
「って…?」

重いドアを押すとギィっと嫌な音がした。
屋上は、カップルがいたり一人で音楽を
聴いているやつがいたり、皆が間隔を守って
それぞれの時間を過ごしていた。

「私、あんたには失望した」

あんた呼わばりか。

「結論から言うけど、のぞみ、桐野と付き合い始めたから」

え、ちょっと…桐野って。

「桐野?陸上部の?」
「そう。私たちと同中の、桐野。あんたがイチャイチャしてた野嶋あんなの元彼の、桐野。元カノだけど奪われてショック受けてた、桐野。しかもその相手はスプリントで結構尊敬してたやつだから悔しくて悔しくて仕方なかった、桐野だよ!!」

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