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20年 あなたと歩いた時間

第12章 君が生きた日々

「寝てていいから!何か作って持ってくから、な?」

多分今までしんどくて寝ていて、僕が来た
せいで起こしてしまったのに、
『寝てていいから』はないよな…
はー、いちいち自分にムカつくな。

「アイス食べたい…」
「あ、あるある。持ってきた」
「ん…」

のぞみをソファに座らせて、アイスクリームの
カップのフタをあけた。
てか、これ高いやつじゃん。
姉ちゃん怒るかな…。
スプーンですくって、食べさせてやると
のぞみはおいしい、とだけ言った。
ひとくち食べてのぞみはソファに深く沈みこみ
目を閉じた。

「流星…ごめん」
「ん?なんで?」
「気づいてあげられなくて…」
「何を?」
「…色んなこと」

僕は絶句した。殴られて罵られて、手酷く
フラれてもおかしくないのは僕のほうだ。

「…おれが悪いんだ。100人にきいたら、101人がそう答えるよ」
「ぷ…増えてる」
「…熱が下がったら話そ。もう部屋で寝て。今夜おれ、ここにいるし」

のぞみはフラフラと階段を上がっていった。
部屋まで付き添うかどうか迷ったが、今の僕は
絶対に信用度ゼロだろうからやめておいた。
一番上まで上がりきって、不安そうにのぞみは
振り返った。

「…大丈夫。朝までここにいるから」

僕は階段の下から、出来る限りの安心を
のぞみが感じられるように、笑った。
不安の底に突き落としたおまえが?だけど、
のぞみが安心するのは、僕の側だって
知っている。
ごめん、のぞみ。
ごめん、のぞみ。
いままで何も言わなくてごめん。
他のやつとキスしたりセックスしてごめん。
いなくなるかも、なんて思わせてごめん。
最低な彼氏だよな。
もう彼氏なんて言ってもらえないかもな。
いいや、それでも。
のぞみが心から笑えるように、心から信頼して
もらえるように、そのためならなんでもする。

だから、神様。
僕に最後のチャンスをください。
今度は、僕の命を懸けてもいい。

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