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20年 あなたと歩いた時間

第12章 君が生きた日々

薬を飲んで寝ていると、本当に徐々に気持ちが
軽くなっていくのがわかった。
8月も後半にさしかかっていて、僕は
高3の夏休みを棒に振ろうとしていた。

「流星、寝てんのか?」

要がいきなり部屋に入ってきた。

「んだよ、ノックしろよ、ノック」

僕はベッドに寝転んで本を読んでいた。

「さとみんが『寝てるから勝手に入っていい』って言うからさ」
「姉ちゃんの言うこと、真に受けるなよ」

要は勉強机の椅子に座って僕の方を見た。
少し日焼けして髪が伸びていた。

「…キツかった?最近」
「かなりな」

要は夏バテとは思っていないようだった。

「あのさ、おれ」
「ん?」
「…のぞみに言ったから。おまえが陸上部の何とかと寝たこと」

は…?要が…?

「いつ?」
「聞いてすぐ」

すぐ、ってことはこの前のぞみがうちに来た時
知ってたってことか…?
嘘だ…。

「おれ、いい加減おまえにムカついてんだよ。紺野とか、陸上部の何とかとか!おまえなんか、のぞみに愛想つかされちまえと思って、全部のぞみに言ったよ。流星なんか全部失ってしまえと思ったんだよ。けど…けどのぞみ、それでも流星が大好きだって言った…」

僕はやわらかな香りを思い出していた。
そんなことを知っていながら、のぞみは僕を
抱きしめた。
そんなの、そんなの次はどんな顔して会えば
いいんだ…?

「のぞみはさ、おまえしか見てこなかったから、おまえしかいないんだよ!それがどんなに残酷なことか、わかるか?おまえみたいなやつしか、好きになれないのに…それでもおまえを信じてるんだよ…っ!」
「それでも」
「あ?!」
「それでも、のぞみはおれのこと好きって言ったんだろ?!じゃあそうなんだよっ!おれだって、のぞみしか好きになったことねーんだよ!一番大事なのはいつものぞみだけなんだよ!要に何がわかるんだよ!バカなことして反省して許されて、そんなこと繰り返すたびに、おれは…おれは…」

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