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20年 あなたと歩いた時間

第2章 16歳

要の言った通り、
自己破産し生活は少し
苦しくなったらしいが表面上は
あまり変わらなかった。
流星の両親はふたりとも
一生懸命働いたが、
それでも難関大学への進学を目指す
流星が塾通いをする費用までは
出せないと言われ、
流星は仕方なくバイトをして
そのお金を工面しているのだった。

「結構充実してるけど?自分で稼いだ金で勉強してるって思うと、授業中も一言一句逃してたまるか、って真剣になる」
「はぁ。すごいねー、流星は。昔からそうだけど、ほんっと真面目だよね。私なんて、勉強も中途半端な感じだし最近家のこともちゃんとしてないなあ」
「のぞみが市高に受かった時点で奇跡だったんだよ」

流星は、あははと白い歯を見せて
笑った。

「ひどいよ、流星」
「おれ、参考書のコーナー見てるから。のぞみは好きな本見てこいよ。三時から夏期講習だから…二時半にここな」
「あ、私時計持ってないんだ」
「じゃあこれ持ってて。おれは大体わかるから」
そう言って流星は自分の腕時計を
私の手首に巻いてくれた。細いな、
と言いながらベルトをギュッとしめた。
三階建てのこの大型書店は、
本だけでなくCDや文房具など
何でも揃っていて飽きない。
私達はよくここで時間を潰したり
待ち合わせをしたりする。
最近真剣に作り始めたお弁当の本でも
探そうと、階段をのぼると
ちょうど降りてきた女の子に
呼び止められた。

「真島さん?」
「…はい」
「ごめんなさい、突然。私、紺野香織。市高の一年A組」

A組は流星のクラスだ。
でも私は彼女を初めて見た。
色白で一言で言えばふわふわした感じの
かわいい女の子。

「こんにちは…」
「さっき、小野塚くんと入ってくるのが見えたから、思わず声かけちゃった」
「あ、そっか。でもどうして私の名前?」
「いつも小野塚くんが話してるから。『のぞみが、のぞみが』って」
「そうなんだ…」
「小野塚くんは?参考書のコーナー?」
「うん、そう」
「私も行こうっと。じゃあね、真島さん」

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