
20年 あなたと歩いた時間
第12章 君が生きた日々
野嶋の声と、桐野の思いが重なって何だか
テンションが下がる。
チャイムが鳴った。
僕は、昨日解けなかった問題を思い出して
更にテンションが下がった。
川辺先生は予告通り、1問目で僕を当てた。
「昨日の『tan1゜は有理数か』を、小野塚。
どう思う?」
「…無理数だと思うけど、証明は途中までしかできなかった。ルート3の無理数証明で挫折しました…」
「じゃ、そこまで前出て書いてみ」
僕は黒板の前に出て、昨日かなり考えて出した
答えを思い出しながら書いた。不本意だ。
途中までしか、解けないなんて。
「よし。上出来」
「え?」
「考えて、頭を使うだけでいいんだ。とにかく、考えろ。考えて考えて、納得のいく答えを出せ。下らないことで悩むな。暇があったら、頭を使え。そこまで答えが出せたんならよし。2問目、松井」
…何なんだよ。解けなかったんだぞ?
川辺先生、何が言いたいんだよ。
ルート3の無理数、証明してくれよ!
(ここから、幅やってるの、見えるんだよな)
さっきの桐野の声がよみがえる。
たぶん、気づいてる。野嶋を見ていたこと。それなのに練習に来いと言えるのがすごい。
「…流星、18?」
「もうすぐね」
「18の男子なんてさ、告白されたらそれだけでその子のこと、好きじゃなくても目で追っちゃうよ。大丈夫、おまえ正常だから。あ、これ飲む?」
また進路指導室に来た。
川辺先生は缶コーヒーを机に置いて、
おごりな、と言った。
最近の野嶋との出来事を、核心には触れずに
話したつもりだけど、正常の一言で
片付けられた。
ていうか、核心って何だよ。
あの場合の核心って!
「悩んでもいいけど、迷うなよ。流星」
「迷ってないよ。悩んでもない。答えは出てるよ。おれは、揺れないよ。絶対に」
「そか」
昨日、また父さんと母さんに進路のことで
色々言われた。
家から通える国立の理系に行けという。
ひとつは姉ちゃんの通う大学。
ひとつは今の僕の成績では難しい大学。
京都医大の受験は、もう誰がなんと言おうと
きめている。
十河先生の再生医療を勉強したい。
塾の模試も、B判定まで上がってきた。
頑張ろ!
「じゃあ、先生、また明日」
「おう。気を付けて帰れな」
帰ったらのぞみに電話をしよう。そんなことを
考えていた。
テンションが下がる。
チャイムが鳴った。
僕は、昨日解けなかった問題を思い出して
更にテンションが下がった。
川辺先生は予告通り、1問目で僕を当てた。
「昨日の『tan1゜は有理数か』を、小野塚。
どう思う?」
「…無理数だと思うけど、証明は途中までしかできなかった。ルート3の無理数証明で挫折しました…」
「じゃ、そこまで前出て書いてみ」
僕は黒板の前に出て、昨日かなり考えて出した
答えを思い出しながら書いた。不本意だ。
途中までしか、解けないなんて。
「よし。上出来」
「え?」
「考えて、頭を使うだけでいいんだ。とにかく、考えろ。考えて考えて、納得のいく答えを出せ。下らないことで悩むな。暇があったら、頭を使え。そこまで答えが出せたんならよし。2問目、松井」
…何なんだよ。解けなかったんだぞ?
川辺先生、何が言いたいんだよ。
ルート3の無理数、証明してくれよ!
(ここから、幅やってるの、見えるんだよな)
さっきの桐野の声がよみがえる。
たぶん、気づいてる。野嶋を見ていたこと。それなのに練習に来いと言えるのがすごい。
「…流星、18?」
「もうすぐね」
「18の男子なんてさ、告白されたらそれだけでその子のこと、好きじゃなくても目で追っちゃうよ。大丈夫、おまえ正常だから。あ、これ飲む?」
また進路指導室に来た。
川辺先生は缶コーヒーを机に置いて、
おごりな、と言った。
最近の野嶋との出来事を、核心には触れずに
話したつもりだけど、正常の一言で
片付けられた。
ていうか、核心って何だよ。
あの場合の核心って!
「悩んでもいいけど、迷うなよ。流星」
「迷ってないよ。悩んでもない。答えは出てるよ。おれは、揺れないよ。絶対に」
「そか」
昨日、また父さんと母さんに進路のことで
色々言われた。
家から通える国立の理系に行けという。
ひとつは姉ちゃんの通う大学。
ひとつは今の僕の成績では難しい大学。
京都医大の受験は、もう誰がなんと言おうと
きめている。
十河先生の再生医療を勉強したい。
塾の模試も、B判定まで上がってきた。
頑張ろ!
「じゃあ、先生、また明日」
「おう。気を付けて帰れな」
帰ったらのぞみに電話をしよう。そんなことを
考えていた。
